「時間当り10キロ視野に研究進む小型湿式気流粉砕」
【掲載紙】 | 商経アドバイス |
【掲載日】 | 2016年1月8日(金) |
≪時間当たり10キロ視野に 研究進む小型湿式気流粉砕≫
小麦食が中心の欧米でも近年、小麦アレルギー患者の増加が社会問題になりつつある上、一流アスリートが小麦食を控えて米食に食事を切り替えたことでスタミナが向上し、世界的な大会でも好成績を収める事例が見られるようになるなど、あらためて米食にスポットが当たっている。
米粉食品に対する業界の期待は根強いものがあり、この期に米粉食品の普及・啓蒙に力を入れていきたい考えの食品企業もある。ただし原料の米粉供給サイドでは、こうした食品企業のニーズに十分対応しきれていない部分があるのも確かだ。
米粉の普及に古くからかかわってきた㈱西村機械製作所(西村元樹社長、大阪府八尾市)によると、米粉食品を開発・普及させたい加工企業には①小ロットの製粉委託をしたい②米粉の粒度やデンプン損傷などをオーダーしたい(オリジナルの商品づくりにつなげたい)③玄米など付加価値商品をつくりたい④加工賃を安くしてほしい―――などのニーズがあるという。
こうしたニーズに応えるため同社では現在、大阪府立大学と技術連携を図り、湿式気流粉砕による従来の製粉機「スーパーパウダーミル」を基幹として「次世代の米粉製粉機」(同社)に取り組んでいる。
粉砕を決定づける気流粉砕エネルギーを解析するほか、粉砕機回転数による気流の変化、気流に特有の乱れを起こす外部ライナー形状の変化などを分析し、米粉の粒子の大きさやダメージ、性状変化などを自在にコントロールできるように研究が進んでいる。これらの米粉粉砕理論を確立し、シミュレーションを重ねてきた。現在では研究開発も大詰めに差しかかりつつあり、今春にはプロトタイプの試作機が完成の予定という。
同社は共同研究によって米粉製粉機の小型化、ブレードやラーナーの改良、粉砕装置の周速の変動や間隙の改良を行い、製粉機の小型化にメドが立ち始めている。これまで小型機は乾式の胴搗式が主流で、湿式気流粉砕では初の試みとなる。今後は、この技術を生かした新しい米粉製粉機の量産を検討している。
湿式のスーパーパウダーミルには、①粒径30~50ミクロンの微細粒粉が得られる②デンプン損傷度が5%以下③水分を8~13%に調整可能④トータルで品質の安定が図れる―――などの特徴がある。米粉パンからケーキ、麺など幅広い利用が可能だ。
現状は最も小さい型式でも1時間当たり30キロの製粉が限界だが、新型機が完成すれば10キロの湿式製粉も可能になる。米粉加工の裾野拡大に期待がかかる。