「よい米粉の条件とは」
【掲載紙】 | 大阪ガス広報誌 「厨(KURIYA)」 |
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【発行日】 | 2012年8月31日(金) |
【記事の内容】
米粉はどうやってつくられ、米粉の品質はどんな要素で決まるのだろうか。和菓子用の米粉製粉で70年の伝統を持ち、米粉パン用の米粉製造を手掛ける片山製粉株式会社の片山清司さんにお話をうかがってみた。
≪最新の製粉技術が米粉を変えた≫
当社でパン用の米粉をつくるようになったのは10年ほど前のことで、最初は試行錯誤でした。和菓子用の粉は戦前から手がけていましたが、パンに使う粉はそれよりももっと細かくしなくてはなりません。粒度の単位でいうと、和菓子の場合は60メッシュ、パン・ケーキの場合は80メッシュくらいです。(※メッシュ:1インチの間に何本の網目が入っているかで表す単位。)かといって、細かいだけでは焼いたときにうまくふくらまないのです。当時、米粉パンを開発しておられたパン職人さんと研究しながらつくっていたのですが、彼が指定する粒度分布に合わせるのに大変苦労しました。(※粒度分布:どれくらいの大きさの粒子がどれくらいの割合で分布するか、粒子群を構成する粒子の分布を表す。)指定された粒度分布は、200~300メッシュが75%程度、80~100メッシュが10%程度入ったものでした。
理想の米粉ができるようになったのは、気流粉砕機を導入してからです。気流粉砕機は、ファンを高速で回転させて大量の空気を送り込み、米が壁にぶつかったり米同士でぶつかったりしながら粉砕する機械です。これを使うとでんぷん損傷が少なくてすみ、出来上がった粉が細かいだけでなく丸い粒になるのです。従来のように、和菓子用の胴搗式製粉機でつぶして粉砕すると、荒々しい粒になってしまいます。両者は顕微鏡で比較すると、粒の形の違いがはっきりわかります。
つまりパンやケーキに適した米粉は、デンプン損傷が少なく、細かい粒子で一定の粒度分布を満たすものだといえます。機械を使いこなす技術が必要とはいえ、気流粉砕機で製粉した米粉を使うようになって、パンやケーキがふっくらと膨らむようになりました。なお、同じ機械を和菓子に使えるかどうかテストしてみたところ、逆に粒子が細かすぎて和菓子はうまくできませんでした。
≪米粉の魅力に開眼≫
米粉を使ったパンは、粘りがあり、噛みごたえがしっかりしています。パサパサしたパンが苦手という方にも好評で、特に食パンに人気がありますね。小麦だけのパンよりもおいしいと、一度食べてリピーターになる方が多いようです。今のところ、米粉パンは米の生産地のほうがよく売れていますが、大阪周辺でももっと認知されるようになれば需要も増えるのではないでしょうか。