「兼業農家の集落が湿式製粉を導入、地元産米使った米粉パン好評」
【掲載紙】 | 米麦日報 |
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【発行日】 | 2012年2月7日(火) |
【記事の内容】
【その後の米用途改革144】 「米粉」特集② 農事組合法人 上望陀
兼業農家の集落が湿式製粉を導入、地元産米使った米粉パン好評
上望陀(かみもうだ)は約25戸の農家からなる農事組合法人で、専業農家は代表の中川一男氏のみ。他はすべて兼業農家からなる。米粉を始めたきっかけは、地元千葉県の農林振興センターから勧められたこと。もともと県の補助金を使ってライスセンターを建設していたことや、中川代表が認定農業者の要件を早くからクリアし、認定農業者団体の会長も務めていたこともあって、県庁との強い関係があった。組合内で協議した結果、米の販売だけでは将来も危惧され、米粉事業の導入に至った。製粉機は県庁担当者の勧めもあって、品質の高い湿式製粉に決定し、㈱西村機械製作所のスーパーパウダーミルを導入した。玄米の製粉も可能な最新の設備となっている。この計画は農水省の半額助成事業・農山漁村活性化プロジェクトに2010年度で採択されている。
現在、製粉を担当する石井義夫氏は「話自体は3年前からあったが、当時はまだ早いとして断っていた」ものの、にわかに聞こえるTPPなど貿易自由化も指摘され、将来を見越しての投資となった。
米粉事業には当初、多くの組合員が良い反応ではなかった。ただ、中川代表の意欲と「地元の奥さんの仕事が出来るので良いだろう」との見通しで賛成された。製粉工場の横には米粉のパンと麺の工房(ライスパウダーかずさ)も作り、そこで製パンし、地元の学校給食や病院、老人ホームなどに納めている。火口は石井氏の妻である由美子さん(上写真)がこっけん料理研究所の講習に通い、オリジナルのレシピを増やしている。米粉パン(グルテン2割)は様々な具材を入れた菓子パンや惣菜パンがあり、1個130円で販売する。1日経ったものは「少し硬くなるので100円」とし、余ったものは地元の小中学校へ持っていくと、教職員に飛ぶように売れるという。
地元の学校給食は主に給食センターが賄っているが、給食会の栄養士の裁量で食材を決められる日が月1回あるという。小中学校合わせると、15~16人の担当栄養士がいることから、「すべてお願いにいき、3か所ほど菓子パンの日に米粉パン導入が決まった」とも。導入する米粉パンは少し甘さを付けたコッペパンで、もちもちした食感が好評だ。
老人ホームには毎週1回朝に、少しボリュームを抑えた70gの米粉パンを100個導入している。「最初は月1回だったが好評で、増やしてもらった」としている。
製粉機は現在、普段は地元の建材屋に努めている石井氏が休みの土日しか動いていない。それでも「県外からも委託製粉があり、ぼちぼち動き出している。より販促すればもう少し増えてくるかと思う」。受託製粉は白米30kgで4,000円、玄米30kgで8,000円と設定している。石井氏は勤め先の社長が県会議員で、助成事業等での関わりから、県庁には出入りはあったとし、製粉機の運用にも積極的に参加した。「県庁からは小ざっぱりまとまった組合と理解されている」ともし、品質の高い米粉の生産に地元からの期待も強い。
組合の将来を考えての投資だが、後継者の問題も付いて回る。中川代表が65歳、その他の組合員も50代が多く、代表の息子さんが40歳で事業を継ぐ予定ではある。組合員の中でも、田植え、耕耘は皆で行い、兼業農家は水の管理と草刈りが任されている。全体で38ha、99%が米で、他にはトウモロコシ、ターサイなど。
米の出荷先は全量JAだが、買い戻す形で同組合の別法人である有限会社丸上食糧ですべて販売している。買取にかかる資金繰り(約4,000万円)の関係もあって、平成17年から現在の形となっている。米の販売先は直売所が半分で残りは地元のスーパー、消費者への直売は1割未満という。品種はコシヒカリが7割で、ひとめぼれ、もち米、酒造好適米を若干扱う。米粉にはコシヒカリを使っている。
米粉の事業はパンフレットを作ってPRしており、玄米製粉や米粉麺の開発などにも取り組み、地元のイベント等の参加を通じて、広めていく狙いだ。